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痩せていても、脂肪肝になる時代

脂肪肝の患者さんは、全国で1,000万人以上と推定されています。
太っている人だけの病気ではなくなった今、知っておきたい肝臓の話。

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれています

健康診断の結果表に「脂肪肝の疑い」「肝機能の数値が高め」と書かれていた経験はありませんか。実はこうした指摘を受ける方は決して少数派ではなく、お酒をあまり飲まない方や、見た目がスリムな方にも広がっているのが現代の脂肪肝の特徴です。日本消化器病学会・日本肝臓学会の報告によれば、日本人成人の9〜30%が脂肪肝に該当するとされています。

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれます。多少の負担がかかってもなかなか症状を出さないため、脂肪が溜まり始めてもご自身では気づきにくく、健診の数値ではじめて違和感を覚える、というのが典型的なパターンです。

ここで知っておいていただきたいのが、放置した場合の経過です。お酒をあまり飲まない方の脂肪肝(NAFLD/ナッフルディーと呼ばれます)のうち、約8〜9割は長い経過をみても進行しないとされています。一方で、残りの1〜2割の方では徐々に病気が進み、肝硬変や肝臓がんへとつながっていく場合があるのです。この進行するタイプを「非アルコール性脂肪肝炎(NASH/ナッシュ)」と呼びます。「飲まないから安心」とは言い切れないのが、現代の脂肪肝の難しさです。

また、脂肪肝は単独の問題で終わらない点にもご注意ください。肥満や糖尿病、脂質異常症、高血圧と密接に関係しており、心筋梗塞や脳卒中といった病気のリスクを高めることも指摘されています。

今日から始められる、肝臓へのいたわり方

ここまでお読みいただくと少し不安になられたかもしれませんが、ご安心ください。脂肪肝は、生活習慣の見直しによって改善が期待できる病気です。むしろ、生活習慣の改善こそが治療の基本とされており、特別な薬は、まだ必要ありません。

まず意識していただきたいのは、食事の見直しです。食事でとったカロリーが消費量を上回ると、肝臓で中性脂肪が多く作られて脂肪肝になります。ご飯やパン、麺類などの主食を毎食ほんの少しずつ減らすことに加え、缶コーヒーやジュースといった甘い飲み物を水やお茶に置き換えると、肝臓にかかる負担はぐっと軽くなります。意外に思われるかもしれませんが、清涼飲料水に含まれる果糖は、肝臓で中性脂肪として蓄えられやすい性質を持っているのです。揚げ物や洋菓子なども控えめにし、青魚や緑黄色野菜を積極的にとると、より効果的とされています。

運動については、ウォーキングやジョギングといった有酸素運動を、週3〜4回、30分以上行うのが目安です。激しいトレーニングを始める必要はありません。通勤時にひと駅分歩くことから始めてみてはいかがでしょうか。そして、肥満傾向のある方は、まず体重の7%を減らすことを目標にしてみてください。体重80kgの方であれば、5.6kg。劇的な減量を目指すのではなく、現実的に続けられる数字から始めるのがコツです。

数字で見つける、肝臓からのサイン

繰り返しになりますが、脂肪肝は症状ではなく検査値で見つかる病気です。だからこそ、年に一度の健康診断や人間ドックが、もっとも確実な早期発見の手段になります。日本における脂肪肝の年齢分布をみると、男性は40〜50代の中年層、女性は60代以降の高齢層に多い傾向があると報告されています。働き盛りの男性の皆さんは、特にご自身の肝臓に目を向けていただきたい年代といえます。

ご自身の肝臓の状態を知ることが、何よりの第一歩です。日々の健診結果を、どうぞ大切にお役立てください。

出典:日本消化器病学会・日本肝臓学会「患者さんとご家族のためのNAFLD/NASHガイド2023」