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成人男性の4〜5人に1人が高尿酸血症と言われています。 痛風だけにとどまらない、腎臓や血管にも関わる「尿酸値」という数字。 その意味をわかりやすく解説します。
健康診断の結果表で「尿酸値」の数字が気になり、ご自身で調べてみたことはありませんか。この数字、実は私たちの体の中で日々起きている新陳代謝の結果を映し出しています。
では、尿酸はどこから生まれるのでしょうか。その答えのカギを握るのが「プリン体」という物質です。プリン体は、細胞の中で遺伝情報を伝える物質の材料であり、私たちの体を構成するすべての細胞の中に存在しています。実は、私たちが生きていくうえで欠かせない、ごく身近な物質なのです。
私たちの体の中では、古い細胞が役目を終えて壊れ、新しい細胞が生まれる――この入れ替わりが、毎日休まず続いています。これを「新陳代謝」と呼びます。古い細胞が壊れる際にプリン体が放出され、それを体が分解して最終的にできる老廃物が、尿酸なのです。「代謝される」とは、こうして体内で分解され、別の形に変えられていく一連の流れを指す言葉です。
つまり尿酸は、私たちが生きて細胞が入れ替わっている限り、自然と作られ続けるもの。プリン体は食べ物にも含まれていますが(ビールや内臓系の食材が有名です)、実はプリン体の多くは、私たち自身の体の中で作られているのです。
健康な状態では、作られる尿酸と、尿や便から排泄される尿酸の量がほぼ釣り合っており、血液中の濃度は一定に保たれています。しかし、何らかの理由でこのバランスが崩れると、血液中に尿酸がたまりはじめます。これが「高尿酸血症」の始まりです。
健康診断では、血液中の尿酸の濃度を測定します。厚生労働省や日本痛風・尿酸核酸学会の基準では、血清尿酸値が7.0mg/dLを超えると「高尿酸血症」と判断されます。
日本における高尿酸血症の方は、推計で約1,300万人とされています。成人男性の20〜25%、つまり4〜5人に1人にあたります。女性は閉経前の方で約5%と少なめですが、閉経後は女性ホルモンの影響がなくなるため、女性も油断できなくなってきます。
ここで本題に入りましょう。「尿酸値が高いと痛風になるの?」というご質問への答えは、「そのリスクは高まります」というのが正確なところです。
尿酸値が高い状態が続くと、血液に溶けきれなくなった尿酸が結晶となって、体のあちこちにくっつきはじめます。顕微鏡で見ると、まるで針のような鋭い形をしています。
この結晶が関節にたまると、体は「異物が入ってきた」と判断して炎症を起こします。突然、関節が赤く腫れあがり、激しい痛みに襲われる。これが「痛風発作」です。多くは足の親指の付け根に起こり、「風が当たっただけでも痛い」ことから痛風という名前がついたと言われています。
つまり、尿酸値の高さは、関節に結晶ができる土壌を作る、ということ。すぐに痛風になるわけではありませんが、高い状態が続けば続くほど、発作のリスクは高まっていきます。
痛風の患者数は、厚生労働省の調査によれば現在約130万人。この25年間でおよそ3倍に増えているとされています。背景にあるのは、私たちの暮らしの変化です。食生活が欧米化して肉類や脂質の摂取が増え、アルコールを楽しむ機会も多くなりました。一方で、車や交通機関の発達によって体を動かす機会は減り、ストレスを抱える方も増えています。これらが重なり合って、尿酸値を押し上げているのです。発作を起こす方の多くは30〜60代の男性で、働き盛りの皆さんに決して他人事ではない数字といえます。
ただし、尿酸値が高くて怖いのは、痛風だけではありません。高尿酸血症は、ほかの病気の引き金にもなり得るのです。
血液中の尿酸は、腎臓にも負担をかけます。長く続けば腎機能の低下につながりますし、尿の中で結晶化すると尿路結石の原因にもなります。さらに、高尿酸血症の方は、高血圧・脂質異常症・糖尿病・メタボリックシンドロームといった生活習慣病を合併している割合が高いことが、多くの研究で報告されています。結果として、心筋梗塞や脳卒中といった心血管の病気のリスクも高まる、ということが指摘されています。
つまり、尿酸値の上昇は単独の問題ではなく、体全体のバランスが崩れはじめているサインとして受け止めるのが正解です。
尿酸値の改善は、生活習慣の見直しから始まります。一度上がった数値も、日々の積み重ねで少しずつ下げていくことが期待できます。
「プリン体ゼロのビールなら大丈夫」と思われている方は、要注意です。アルコールそのものに、尿酸を上げる働きがあることがわかっています。プリン体の含有量だけが問題ではないのです。
ビールに限らず、日本酒、ワイン、ウイスキー、焼酎、いずれも適量を心がけることが大切です。お酒は適量を守り、週に2日は休肝日を設けることが推奨されています。
プリン体を多く含む食品としては、レバーや白子、干物、エビ、イワシなどが知られています。完全に避ける必要はありませんが、毎日のように食卓に並ぶようなら、量や頻度を見直してみてください。
意外な落とし穴が清涼飲料水やジュースに含まれる「果糖」です。果糖は体内で尿酸の産生を促す働きがあり、知らず知らずのうちに尿酸値を押し上げる原因になります。喉が渇いたら、ジュースよりお茶や水を選ぶ。これだけでも、ずいぶん違ってきます。
水分は1日2リットルを目安に、こまめにとるのもおすすめです。尿の量が増えれば、尿酸の排泄も促されます。
運動も大切ですが、注意点があります。激しい運動や短距離走のような無酸素運動は、かえって尿酸値を上げてしまうことがあるのです。すでに尿酸値が高めの方は、ウォーキングなどの軽い有酸素運動にとどめるのが安全とされています。
「健康のために頑張って走り込む」というよりも、「毎日少しずつ、無理なく続ける」というスタンスが、尿酸値との付き合い方には合っています。
健康診断の結果表で尿酸値が気になった方は、痛みがなくても、ぜひ一度ご自身の体と向き合う機会にしてみてください。数字は、体からのメッセージです。
出典:厚生労働省「e-ヘルスネット」、日本痛風・尿酸核酸学会「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン」、令和4年「国民生活基礎調査」